「何を聞けばいいか分からない」は、よくあるつまずき
生成AIを使い始めた人から一番よく聞くのが、「便利だと聞いたけれど、何を聞けばいいのか分からない」という声です。
支援先で実際の使い方を一緒に見ていくと、うまくいかない原因はAIの性能ではなく、「自分が何をしたいか」がAIに十分に伝わっていないことであることがほとんどです。AIは、聞かれたことには答えますが、頭の中にある目的までは読み取れません。
たとえば、「議事録をまとめて」と頼むのと、「決定事項・未決事項・担当者・期限の4項目で整理して」と頼むのとでは、返ってくる答えの実用度がまったく違います。後者は、出力の形まで指定しているため、そのまま会議後の共有に使える形になります。
答えの質を変える「4つの指定」
質問が思いつかない時は、次の4つを書き出してから頼むと、ほとんどの場合うまくいきます。
| 指定する項目 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| ① 目的 | 何のために使うか | 取引先への日程調整のお願いメールを送りたい |
| ② 相手 | 誰向けか、どんな関係か | 初めて連絡する取引先の担当者 |
| ③ 形 | どんな形で出してほしいか | 200字程度、丁寧な文体、件名つき |
| ④ 材料 | 元になる情報 | 候補日は3日、場所はオンライン |
特に効くのが、②の相手と③の形です。「誰向けに」「どんな形で」まで指定するだけで、回答が劇的に変わります。ここを省くと、AIは「誰にでも当てはまる一般的な文章」を返すしかありません。
そのまま使える言い換え例
「聞き方が分からない」という人のために、よくある業務の言い換え例を並べます。
| よくある頼み方 | 改善した頼み方 |
|---|---|
| 議事録をまとめて | 以下のメモを、決定事項・未決事項・担当者・期限の4項目に整理して |
| メールを書いて | 初めて連絡する取引先に、会議の日程調整をお願いするメールを。200字程度、丁寧に、件名もつけて |
| Excelの関数を教えて | A列に日付、B列に金額があります。月ごとの合計を別の表に出したいです。使っているのはMicrosoft 365です |
| エラーを直して | このエラーメッセージが出ました。直前にこの操作をしました。考えられる原因を可能性の高い順に3つ挙げてください |
| 資料の構成を考えて | 新人向けのセキュリティ研修(30分)の資料を作ります。スライド構成案を、1枚ごとの見出しと要点で出してください |
どれも、特別な言葉遣いは使っていません。人に仕事を頼む時と同じように、目的・相手・形を伝えているだけです。
質問が思いつかない時は、AIに質問してもらう
そもそも「自分が何をしたいか」がまとまっていない場合は、AIに聞き役になってもらう方法があります。
〇〇について悩んでいます。状況を整理したいので、私に3つ質問してください。答えたら、次の質問をしてください。
AIから出された質問に答えていくうちに、自分の目的や条件が整理されます。整理できたら、その内容を「4つの指定」に当てはめて、あらためて依頼します。
AIが得意なのは「たたき台」づくり
実際に便利だと感じやすいのは、ゼロから完成品を作らせることよりも、たたき台を作らせる使い方です。
- メール文の下書き
- 資料の構成案
- Excelの関数の候補
- エラーの原因として考えられる項目の洗い出し
どれも、「ゼロから考え始めるまでの時間」がかかる作業です。AIに最初の案を出してもらい、人が直したり選んだりするだけで、取りかかりの負担がぐっと軽くなります。私はAIを、**「考え始めるまでの時間を短くする道具」**だと捉えています。完成品を任せる相手ではなく、最初の一歩を手伝ってもらう相手、という位置づけです。
一度で完璧を求めない
最初の回答に満足できなくても、あきらめる必要はありません。追加の指示を重ねるのが基本の使い方です。
- 「もっと短くして」
- 「専門用語を使わずに言い換えて」
- 「3パターン出して、違いを説明して」
- 「相手が年上の方なので、もう少し丁寧にして」
2〜3回のやりとりで整えるつもりで使うと、「思った通りにならない」というストレスがかなり減ります。