結論: **委託先管理(ベンダーリスク管理)**は、業務やデータを預ける外部の会社のリスクを、選ぶ時から契約終了まで管理することです。**自社のシステムが無事でも、委託先が侵害されると、預けたデータが漏れます。**確認する観点は、預けるデータ・認証と権限・脆弱性対応・記録と検知・事故時の対応・終了時の6つです。
委託先管理とは
メールの配信、クラウドのサービス、システムの開発や保守、コールセンターなど、多くの企業は、業務やデータを、**外部の会社(委託先、ベンダー)**に任せています。
委託先管理は、その委託先の、情報セキュリティのリスクを、把握し、減らす取り組みです。ベンダーは、取引先を意味する言葉で、「ベンダーリスク管理」とも呼ばれます。
なぜ必要なのか:委託先で起きた事故が、自社の利用者に及ぶ
最近、メール配信の委託先で起きた事案が、続いています。
- ユミルリンク「Cuenote FC」(10月26日の第2報で、延べ5,162万件)(ユミルリンク不正アクセスで5162万件漏えい|自分は対象?やること)
- アララ「アララ メッセージ」(11月2日の第2報で、最大約380社・メールアドレス約7,700万件)(アララ メッセージに不正アクセス|最大7,700万件のメールアドレス流出、自分は対象?)
どちらも、利用企業の多くは、自社のシステムが侵害されていないのに、預けたメールアドレスが漏れました。利用者から見ると、「登録した会社から、情報が漏れた」と受け止められます。同じ構造の事案は、サプライチェーン攻撃とはでも解説しています。
確認する6つの観点
| 観点 | 確認したいこと |
|---|---|
| ① 預けるデータ | どの情報を、何件、どこまで預けるか。不要な情報は預けない |
| ② 認証・権限 | 管理用アカウントの多要素認証、IP制限、権限の範囲(最小権限の原則) |
| ③ 脆弱性対応 | 使っているソフトや部品の更新の運用、診断の実施(脆弱性診断とペネトレーションテストの違い) |
| ④ 記録・検知 | ログの保管、不審な動きを見つけて対応できる体制(EDRとは) |
| ⑤ 事故時の対応 | 通知までの期限、連絡先、影響範囲の報告の方法 |
| ⑥ 終了時 | 契約終了後の、データの返却・削除、再委託先の扱い |
4つの場面で考える
① 選ぶ時
- 預けるデータの種類と量を、先に決める
- 委託先のセキュリティ体制(認証の取得、運用の説明、事故の履歴)を確認する
- 質問票や、監査の報告書で、確認する
② 契約する時
契約書で、次のようなことを決めておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事故時の通知 | いつまでに、誰に、何を報告するか |
| 再委託 | 再委託をする時の、事前の承認と、同じ水準の管理 |
| 監査 | 必要な時に、委託先の体制を確認できる権利 |
| データの扱い | 目的外の利用の禁止、保管場所、返却・削除 |
| 損害の負担 | 事故が起きた時の、責任の範囲 |
③ 使っている間
- 契約時に確認して終わりにしない。定期的に確認する
- 預けているデータが、増えすぎていないか見直す
- 委託先から、脆弱性や事故の連絡が来た時の対応を、決めておく
- 認証情報(APIキーなど)を、定期的に更新する(APIキーとは)
④ 終わる時
- 預けたデータを、返してもらう、または削除してもらい、その証明を受け取る
- 再委託先にも、データが残っていないか確認する
- 委託先のアカウント・権限を、すべて無効にする
事故が起きた時の動き
委託先から、事故の連絡があった時に、すぐ動けるよう、事前に決めておきます。
- 事実の確認:何が、いつ、どこまで漏れたか(委託先に、情報提供を求める)
- 被害を広げない:該当する認証情報の無効化、関連するシステムの停止
- 利用者への連絡:何が漏れたか、利用者がやること、問い合わせ先
- 関係機関への報告:必要に応じて、個人情報保護委員会や、警察へ
- 再発の防止:委託先を含めた、見直し
事故の直後は、便乗した偽のメールやSMSが増えます。利用者に、公式の窓口と、不審な連絡への注意を、あわせて知らせます。