「見えている部分」だけが、渡るとは限らない
AIにExcelの表を読み込ませて、集計を手伝ってもらう。画面のスクリーンショットを渡して、エラーの原因を聞く。AIの使い方として、とても便利です。
ただし、注意したいことがあります。ファイルやスクリーンショットには、画面では気づきにくい情報が、含まれていることがあります。文章をコピーして貼る場合は、貼った内容が目で確認できますが、ファイルをそのまま渡す場合は、見えていない部分も、渡してしまう可能性があります。
ファイルに、隠れていることのある情報
ExcelやWord、PowerPointのファイルには、次のようなものが含まれることがあります。
| ファイル | 隠れていることのある情報 |
|---|---|
| Excel | 非表示のシート、コメント、作成者情報、外部へのリンク |
| Word | 変更履歴(削除した文章を含む)、コメント、隠し文字、作成者情報 |
| PowerPoint | 非表示のスライド、発表者ノート、コメント、グラフの元データ |
たとえば、Wordの変更履歴が残っていると、削除したはずの文章が、履歴として、ファイルの中に残っていることがあります。PowerPointの発表者ノートには、話す内容のメモや、社内向けの注意書きが書かれていることがあります。
スクリーンショットに、写り込みやすいもの
画面を撮影した画像には、意図せず写り込む情報があります。
- 画面の隅に出る、通知のバナー(メッセージの送信者名や、内容の一部)
- 開いている他のタブや、ブックマーク(取引先名や、案件名)
- アドレスバーのURL(個人用のトークンや、社内のページ名が含まれることがある)
- ログイン中のアカウント名や、メールアドレス
- 背景に開いている、他のウィンドウ
特に、通知は、撮影の瞬間に表示されるため、気づきにくいものです。
渡す前に確認したい5つのこと
① 必要な範囲だけに、絞る
ファイル全体を渡すのではなく、必要な部分だけを、新しいファイルに作り直すほうが安全です。たとえば、表の一部だけを、新しいブックにコピーします。スクリーンショットも、必要な部分だけを、切り取ります。
② 隠れた情報を、調べる
ファイルの内容を、目で確認するだけでなく、隠れた情報がないかを調べます。当サイトの提出前ファイル診断では、Excel・Word・PowerPointのファイルを、ブラウザ上で調べて、非表示のシートやスライド、変更履歴、コメント、発表者ノート、作成者情報などを確認できます(ファイルは、サーバーに送信されません)。
③ スクリーンショットの写り込みを、消す
撮影の前に、通知を一時的にオフにし、必要なウィンドウ以外を閉じます。撮影した後に、画像を見直して、写り込んでいるものがないか確認します。
④ 個人情報・社外秘を、伏せる
氏名・連絡先・取引先名・金額などは、仮名や記号に置き換える、または塗りつぶします。文章として貼る場合は、AIに貼る前チェックで、機微情報らしき文字列を確認できます。
塗りつぶす時は、注意が必要です。元のPDFや文書の上に、黒い図形を重ねただけだと、下の文字が、残っていることがあります。塗りつぶしたら、画像として書き出すことで、確実に隠せます。
⑤ 組織のルールを、確認する
そもそも、そのAIサービスに、業務のファイルを渡してよいのか、組織のルールを確認します。ルールが、まだ整っていない場合は、生成AI利用ルールのひな形が、参考になります。
場面別:何を渡して、何を渡さないか
よくある場面ごとに、渡し方の考え方を整理しました。
| 場面 | 渡し方の目安 |
|---|---|
| Excelの関数を相談したい | 実際のデータは渡さず、列の構成と、やりたいことを、文章で伝える。必要なら、ダミーの数行だけ |
| エラーの原因を聞きたい | エラー画面の、エラーメッセージの部分だけを切り取る。アカウント名やURLは、伏せる |
| 資料の内容を要約してほしい | 機密表示がない部分だけを、文章として貼る。ファイル全体は渡さない |
| 議事録を整理してほしい | 参加者名や案件名を、仮名に置き換えた、メモを貼る(議事録をAIで安全に整理する手順) |
| 画面の使い方を聞きたい | 該当の画面だけを、切り取る。通知や、他のタブが写っていないか確認する |
共通するのは、目的を達成するために必要な最小限だけを渡すことです。「念のため、全部」ではなく、「必要な部分だけ」を、基本にします。
迷った時は「渡さない」
どこまで確認しても、不安が残る時は、渡さないのが基本です。必要なことは、ファイルを渡さなくても、構造だけを文章で伝えることで、解決できることが多くあります。
たとえば、Excelの関数を相談したい場合は、実際のデータではなく、「A列に日付、B列に金額がある」という構造だけを伝えれば、十分です(ExcelでAIに関数を書かせるコツ)。
手順のまとめ
- 必要な部分だけを、新しいファイル・画像として作る
- ファイルは、提出前ファイル診断で、隠れた情報を確認する
- スクリーンショットは、通知をオフにして撮り、写り込みを見直す
- 個人情報・社外秘は、伏せるか、塗りつぶして画像化する
- 組織のルールを、確認する
まとめ
- ファイルやスクリーンショットには、画面では気づきにくい情報が含まれることがある
- 確認する5つは、範囲の絞り込み・隠れた情報・写り込み・伏せ字・ルール
- 塗りつぶしは、画像として書き出すと確実
- 迷った時は、渡さない。構造だけを、文章で伝える
画面を撮影する基本の方法は、スクリーンショットの撮り方でも解説しています。