最初に確認するのは、手法ではなく「目的」
データ分析の支援で、最初に確認したいのは、どんな手法を使うかではありません。**「何を明らかにしたくて、その結果を何に使うのか」**という、目的です。
データが大量にあっても、目的が曖昧なまま分析を始めると、きれいなグラフや細かな集計はできても、結局どの判断に役立つのか分からない、という状態になりがちです。
例:「売上データを分析したい」
たとえば、「売上データを分析したい」という相談があったとします。同じ言葉でも、目的が違えば、見るべきデータも、分析の方法も変わります。
| 目的 | 見るもの | 分析の方向 |
|---|---|---|
| 売上の状況を把握したい | 期間ごとの売上の推移、全体の傾向 | 集計と、見やすい可視化 |
| 売上が落ちている原因を知りたい | 商品・地域・顧客層などの内訳、前の期間との比較 | どこで落ちているかの切り分け |
| 次にどの商品へ投資するかを判断したい | 商品ごとの利益、成長の度合い、今後の見込み | 比較と、判断の材料の整理 |
「売上を分析したい」という依頼を、そのまま受けるのではなく、**「その結果で、何を決めるのか」**まで聞くことで、分析の方向が決まります。
もう一つの落とし穴:数字の「定義」
目的と並んで重要なのが、数字の定義です。
たとえば、「顧客数」という言葉は、次のように、いくつもの意味で使えます。
| 定義 | 内容 |
|---|---|
| 期間内の購入者数 | その期間に、実際に購入した人数 |
| 登録されている全顧客数 | 購入の有無にかかわらず、登録されているすべての人数 |
| 重複を除いた人数 | 同じ人が複数回カウントされないように、まとめた人数 |
どれを使うかで、結果は大きく変わります。担当者ごとに集計方法が違えば、同じデータを使っているつもりでも、異なる数字が出てしまいます。会議で数字が合わない時、原因は、計算の間違いではなく、定義の違いであることが少なくありません。
分析の前に整理したい4つ
そのため、データ分析では、いきなり集計や可視化に入るのではなく、次の4点を整理します。
| 整理すること | 問い |
|---|---|
| ① 判断 | 何を判断するための分析か |
| ② 指標 | その判断に、必要な指標は何か |
| ③ 定義 | その指標を、どのように定義するか(期間・対象・重複の扱い) |
| ④ データの質 | 欠損・重複・更新時期に、問題はないか |
特に③は、関係する人で、そろえることが大切です。決めた定義は、文書に残しておくと、後から数字が食い違った時に、確認できます。
分析を頼まれた時に、最初に聞く質問
分析の依頼を受けた時は、次の質問から始めると、方向がぶれにくくなります。
- この分析の結果を、誰が、何を決めるために使いますか
- いつまでに、どの程度の精度が必要ですか
- 今、どの数字を見ていて、何が気になっていますか
- その数字は、誰が、どのように集計していますか(定義は、そろっていますか)
- 使えるデータは、どこにあり、いつ更新されますか
5つ目まで答えが出ない場合、分析に入る前に、データと定義の整理が必要です。
数字が合わない時の確認の順番
会議で、「担当者によって、数字が違う」という状況になった時は、計算の間違いを探す前に、次の順で確認すると、原因が見つかりやすくなります。
| 順番 | 確認すること |
|---|---|
| ① 定義 | 同じ言葉を、同じ意味で使っているか |
| ② 期間 | 集計の期間(開始日・終了日)が、そろっているか |
| ③ 対象 | 含める対象・除く対象(キャンセル・テストデータなど)が、そろっているか |
| ④ 重複 | 同じものを、二重に数えていないか |
| ⑤ 更新時期 | データを取り出した時点が、そろっているか |
多くの場合、計算の誤りよりも、前提の違いが原因です。この確認の順番を、チームで共有しておくだけでも、数字をめぐる議論が、短くなります。
手法より、「問いを立てる」力
データ分析で大切なのは、難しい分析手法を使うことより、数字の意味を正しくそろえ、判断につながる問いを立てることだと考えています。
きれいなグラフを作ることが、目的ではありません。「このグラフを見て、誰が、何を決めるのか」に答えられる分析こそが、役に立つ分析です。
AIや表計算ソフトで集計する時も同じ
AIに集計を頼む時も、Excelで集計する時も、同じことが言えます。「顧客数を出して」と頼むだけでは、どの定義で数えるかが、伝わりません。定義と、期間、対象を、明示して頼んでください。出てきた数字は、手計算で一部を確認することも大切です(ExcelでAIに関数を書かせるコツ、AIの嘘を見抜く5つの方法)。
まとめ
- 分析の最初に確認するのは、手法ではなく目的(何を判断するのか)
- 同じ「売上」でも、目的によって、見るもの・方法が変わる
- 「顧客数」のような言葉は、定義をそろえないと、数字がぶれる
- 分析の前に、判断・指標・定義・データの質の4つを整理する
- 大切なのは、難しい手法より、判断につながる問いを立てること