一番巧妙だった偽メールは、「自分も一瞬、本物だと思った」
フィッシング詐欺のメールで、私が一番巧妙だと感じたのは、ロゴ、差出人名、内容、届くタイミングまで、すべてが自然な偽メールでした。自分自身も、一瞬、本物だと思いかけた経験があります。
ITの仕事をしていても、そう感じるのですから、普段、あまりメールの真偽を気にしない方が、見分けるのは、相当に難しいはずです。そこで、私は、「見分ける」ことに頼らない方法に、切り替えました。
見分けようとする対策の、限界
よく紹介される見分けのポイントは、次のようなものです。
- 送信元のメールアドレスが、おかしくないか
- 本文に、不自然な日本語がないか
- 急がせる内容や、脅すような表現がないか
- リンク先のURLが、公式のものと違わないか
これらは、役に立つ場合もあります。しかし、巧妙な偽メールは、これらを、うまくクリアしてきます。本物のサービスと同じロゴを使い、実際に利用しているサービスの名前で、ちょうど届いてもおかしくない時期に、メールが届きます。
見分ける力は、人によって差があり、疲れていたり、急いでいたりすると、働きません。うっかりは、誰にでも起きる前提で、仕組みを考える必要があります。
「開かない」仕組みで防ぐ
私が徹底している習慣は、次の2つです。
① メール内のリンクは、開かない
メールに書かれたリンクは、真偽にかかわらず、押さない。これだけで、偽サイトへの入口を、ほぼ塞げます。
② 公式アプリや、ブックマークから、アクセスする
メールに書かれている用件(「ご確認ください」「手続きが必要です」)が気になったら、自分で、公式アプリを開くか、あらかじめ登録しておいたブックマークから、そのサービスにアクセスします。本当に必要な通知なら、サービスの画面にも、同じ内容が表示されているはずです。
| 従来の対策 | 仕組みで防ぐ対策 |
|---|---|
| 本物か偽物かを、見分ける | メール内のリンクを、そもそも開かない |
| 注意して読む | 公式アプリ・ブックマークから、自分でアクセスする |
| 気をつける | 迷った時の手順を、あらかじめ決めておく |
「気をつける」という、注意力に頼る対策より、手順にしてしまうほうが、確実に続けられます。
被害を小さくする、もう一つの備え
どれだけ気をつけても、うっかり入力してしまう可能性は、ゼロにできません。そのため、入力してしまっても、被害を小さくする備えも、大切です。
- 二段階認証・パスキーを設定する:パスワードを知られても、すぐには、アカウントを乗っ取られにくくなります。パスキーは、偽サイトでは使えない仕組みのため、フィッシングへの強さが、特徴とされています(2段階認証とパスキー)
- パスワードを、使い回さない:1つが漏れても、他のサービスに広がらないようにします(パスワード管理の基本)
- 重要なサービスの通知を、確認しやすくしておく:不審なログインの通知に、早く気づけるようにします
迷った時の手順を、決めておく
不審なメールが届いた時のために、次の手順を決めておくと、慌てずに済みます。
- リンクを押さず、添付ファイルも開かない
- 用件が気になるなら、公式アプリや、ブックマークから、サービスを開いて確認する
- 組織のメールなら、情報システム部門などに、転送や報告をする
- 確認できるまで、何も入力しない
組織で、仕組みにしておきたいこと
個人の習慣だけでなく、組織としても、「うっかり」を前提にした仕組みを用意しておくと、被害を抑えられます。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 報告しやすい窓口 | 不審なメールを、気軽に転送・報告できる窓口を作る。「報告したら怒られる」と思われると、被害が隠れてしまう |
| 開かない手順の周知 | 「メール内のリンクは開かず、ブックマークや公式アプリから」を、組織の標準の手順にする |
| 二段階認証の必須化 | 重要なシステムでは、パスワードだけで入れない状態にする |
| 外部からのメールの表示 | 社外から届いたメールに、見分けやすい表示をつける |
| 報告された事例の共有 | 実際に届いた偽メールの例を、社内で共有し、手口に慣れておく |
特に大切なのは、**「うっかり開いてしまった人を、責めない」**ことです。責められる環境では、早い報告が遅れ、被害が広がります。「間違えても、すぐ報告できる」状態にしておくことが、組織の防御力になります。