声だけで、本人確認するのは危険
AIの技術が進み、本人の声そっくりの音声を、作れるようになりました。家族や上司の声で電話がかかってきて、「急いでお金が必要」「このコードを教えて」と言われる。このような手口が、現実の脅威になっています。
私自身、声がそっくりな偽の電話の事例を知ってから、声だけで本人確認をするのは危険だと、強く感じるようになりました。「声が本人だから、本人に違いない」という、これまでの常識が、通用しなくなっているのです。ディープフェイクの基本は、ディープフェイクとはで解説しています。
狙われやすい場面
次のような依頼は、特に注意が必要です。
| 場面 | 典型的な依頼 |
|---|---|
| 家族を装う | 「事故にあった」「急にお金が必要」と、すぐの送金を求める |
| 上司・取引先を装う | 「急ぎの案件だ。この口座に、今すぐ振り込んでほしい」 |
| 担当者を装う | 認証コードや、パスワード、ログイン情報を、聞き出そうとする |
| 公的機関・金融機関を装う | 「口座が停止される」と不安をあおり、情報を聞き出す |
共通しているのは、急がせることと、お金や認証情報を求めることです。冷静に考える時間を与えないのが、典型的なやり方です。偽の警告画面を使う手口は、テクニカルサポート詐欺にも共通します。
身を守る4つの基本
① 合言葉を決めておく
家族や、職場の近しい人と、事前に、合言葉を決めておきます。電話で、お金や重要な頼みごとがあった時に、合言葉を答えられるかで、確認します。合言葉は、SNSなどに書かず、対面で決めておくのが安全です。
② 別の経路で、確認する
電話で、重要な依頼を受けたら、電話を切って、別の手段で確認します。
- 着信への折り返しは、しない(表示番号が偽装されることがあります)
- 自分で、登録済みの番号や、公式の連絡先にかけ直す
- チャットやメールなど、別の連絡手段でも確認する
③ 急かされたら、止まる
「今すぐ」「誰にも言わないで」と言われたら、それ自体が、警戒のサインです。「確認してから、かけ直します」と言って、電話を切って構いません。本物の相手であれば、確認の時間を待ってくれるはずです。
④ 複数人で確認する
お金や、重要な設定に関わる依頼は、1人で判断せず、もう1人に相談します。家族なら別の家族、職場なら上司や同僚です。第三者の目が入るだけで、おかしさに気づきやすくなります。
組織で作っておきたい仕組み
職場では、個人の注意に頼らず、仕組みで防ぐことが大切です。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 電話だけで完結させない | 送金・口座変更・設定変更は、電話やチャットの指示だけでは、実行しない |
| 承認の手順を決める | 一定額以上の送金は、複数人の承認を必要にする |
| 緊急時の確認方法を決める | 「社長や上司からの急ぎの依頼」を確認する、別の連絡手段を決めておく |
| 声や映像の扱いを見直す | 経営者や担当者の音声・動画を、必要以上に公開しない |
| 周知と訓練 | 手口を共有し、定期的に、確認の手順を見直す |
「社内だから安全」「声が本人だから安全」という思い込みを前提にしない考え方は、ゼロトラストとはの考え方にも通じます。
合言葉の決め方
合言葉は、決め方次第で、効果が変わります。
- 対面で決める:メールやチャットで決めると、漏れる可能性があります
- 他人に推測されにくいものにする:ペットの名前や誕生日など、SNSから分かるものは避けます
- 定期的に変える:長く同じものを使うと、漏れた時のリスクが高まります
- 使う場面を決める:お金や、重要な頼みごとがあった時に、必ず使う
家族の間では、「お金の話が電話であったら、合言葉を聞く」とだけ、決めておけば十分です。職場では、緊急の依頼に使う確認方法を、あらかじめ決めておきます。
映像(ビデオ会議)にも注意
ディープフェイクは、声だけでなく、顔の映像にも使われます。ビデオ会議で、上司や取引先の顔が映っていても、映像が本物とは限りません。次のような依頼があった時は、映像を見ても安心せず、別の経路で確認してください。
- 会議の最中に、急に、送金や設定変更を指示される
- 普段と違う連絡手段や、新しいアカウントで会議に誘われる
- 不自然に、カメラをオフにしたがる、音声が途切れる
また、自分の声や動画を、SNSなどで公開する場合は、どこまで公開するかを考えておくことも、対策の一つです。