一言でいうと
RPOとRTOは、災害やトラブルの時に、システムやデータを「どこまで」「どれくらいで」戻すかの目標を表す、2つの指標です。
| 指標 | 正式名称 | 意味 | 問い |
|---|---|---|---|
| RPO | Recovery Point Objective(目標復旧時点) | どの時点のデータまで戻せるか | どれだけ前のデータまでなら、失っても許せるか |
| RTO | Recovery Time Objective(目標復旧時間) | 止まってから、何時間以内に復旧させるか | どれだけの時間、止まっていても耐えられるか |
たとえ話:書きかけの原稿が消えたら
パソコンで原稿を書いていて、突然、データが消えたとします。
- RPO:最後に保存したのが「昨日の夜」なら、昨夜の時点までは戻せますが、今日書いた分は失われます。これがRPOの考え方です
- RTO:保存したデータを取り出して、元の作業ができる状態に戻すまでに、3時間かかったなら、RTOは3時間です
RPOを短くするには、保存の頻度を上げる必要があります。RTOを短くするには、復旧の手順や仕組みを整える必要があります。
バックアップの取り方との関係
| バックアップの頻度 | RPO(最大でどれだけ失うか) |
|---|---|
| 週に1回 | 最大で約1週間分 |
| 毎日1回 | 最大で約1日分 |
| 1時間ごと | 最大で約1時間分 |
| リアルタイムに複製 | ほぼゼロ(ただし、費用と仕組みが大きくなる) |
頻度を上げるほど、RPOは小さくなりますが、費用も手間も増えます。どこで折り合いをつけるかが、RPOを決めるということです。
決め方の流れ
- 業務を洗い出す:どんな業務で、どのデータやシステムを使っているか
- 影響を考える:その業務が止まったら、データが失われたら、どんな影響が出るか
- 許容できる範囲を決める:許容できるデータ損失(RPO)と、停止時間(RTO)
- 手段を選ぶ:バックアップの頻度、保存先、復旧の手順を、目標に合わせて選ぶ
- 実際に試す:目標どおりに、復旧できるかを確かめる
すべての業務を、最高水準にする必要はありません。たとえば、注文システムは厳しく、社内の資料置き場は緩めに、というように、重要度に応じて決めます。
業務ごとの考え方(例)
目標の決め方のイメージを、例で示します。あくまで考え方の例であり、実際の値は、業務への影響で決めてください。
| 業務の例 | 失うと困る度合い | 止まると困る度合い | 考え方 |
|---|---|---|---|
| 受注・決済のシステム | 非常に大きい(取引の記録が消える) | 非常に大きい(売上に直結) | RPO・RTOとも、厳しく設定し、手間と費用をかける |
| 社内の共有ファイル | 大きい(作業の成果が消える) | 中程度(数時間は代替可能) | 毎日のバックアップを基本に、復元時間を確認する |
| 社内向けの情報サイト | 中程度 | 小さい | 週次のバックアップなど、緩めの設定にする |
| 個人のパソコン | 人による(写真や書類) | 小さい | クラウドと外付けの、2か所に分けて保存する |
「どのデータを失うと、一番困るか」から考えると、優先順位がつけやすくなります。
最も見落とされるのは「復元テスト」
バックアップで重要なのは、「バックアップを取っていること」と「必要な時に復元できること」は別だという点です。設定が有効で、毎日バックアップが取れていても、実際にデータを戻せるかどうかは、復元を試してみるまで分かりません。
たとえば、次のような問題があれば、いざという時に、想定どおりには復旧できません。
- 復元に必要なパスワードが、分からなくなっている
- 担当者しか、手順を知らない
- 手順書が古く、画面や操作方法が、変わってしまっている
- バックアップのデータが壊れていて、戻せない
- 戻せたが、想定より、何倍も時間がかかる
こうした問題は、試して初めて見つかります。年に1回でも構いません。実際に復元を試し、かかった時間を記録しておくことが、RTOを現実のものにする、一番確実な方法です。
データ分析や業務システムの支援でも、「普段は問題なく動いていること」と、「トラブルが起きた時に、業務を再開できること」は、分けて考える必要があると感じています。バックアップの有無を確認するだけでなく、次の3点まで確認することが大切です。
- いつの時点のデータに、戻せるのか(RPO)
- 復旧までに、どれくらい時間がかかるのか(RTO)
- 誰が、復元できるのか
バックアップの基本は、パソコンのバックアップの始め方や、同期とバックアップの違いで解説しています。