※この記事は、2026年10月14日時点で公表・報道されている情報をもとに書いています。調査が続いている事案もあり、続報によって内容が変わる可能性があります。
「大手なのに、なぜ」という疑問
2026年9月から10月にかけて、誰もが名前を知っている企業やサービスから、個人情報の流出が相次いで公表されています。飲食チェーン、コンビニ、カーシェア、証券会社、小売店。ニュースを見て、「大手企業なのに、なぜ防げなかったのか」と感じた方も多いと思います。
結論から言うと、大手であっても、防ぎきるのは、とても難しいのが実情です。この記事では、情報が流出する入口を、5つに分けて整理します。直近の事案の背景は、なぜ今、個人情報の流出が相次いでいるのかで整理しています。
流出の入口は、大きく5つ
| 入口 | 内容 | たとえ |
|---|---|---|
| ① 脆弱性の悪用 | ソフトウェアや機器の欠陥(脆弱性)を突かれる | 建物の、鍵の壊れた窓から入られる |
| ② APIの不備 | アプリとサーバーをつなぐ窓口(API)の守りが弱い | 受付を通さずに、裏口から情報を取り出される |
| ③ 盗まれたIDとパスワード | 正規のログイン情報を使って、正面から入られる | 合鍵を作られて、堂々と入られる |
| ④ 委託先・共通サービス経由 | 取引先や、複数の企業が使うサービスから入られる | 取引先の鍵を盗んで、本社に入られる |
| ⑤ 管理不備 | 設定の間違いや、不要なものの公開、古いデータの放置 | 鍵をかけ忘れた倉庫に、入られる |
① 脆弱性の悪用
ソフトウェアや、VPN機器のような通信機器には、設計上の欠陥(脆弱性)が見つかることがあります。メーカーは、修正プログラムを提供しますが、適用が遅れている間に、攻撃者に先に突かれることがあります。
政府の共通の業務基盤で2026年9月に公表された不正アクセスでは、既知のVPN機器の脆弱性を悪用した侵入が確認されたと、報じられています。攻撃者は、特定の企業を狙うだけでなく、広く「穴の空いたシステム」を探してから、試すこともあります。
脆弱性の対応が難しいのは、どこで、何のソフトウェアを使っているのかを、把握しきれていない組織が少なくないからです(SBOMとはの考え方が役立ちます)。
② APIの不備
スマートフォンのアプリは、裏側で、サーバーとAPIという窓口を通して、情報をやり取りしています(APIとは)。この窓口の守りが弱いと、アプリを通さずに、直接情報を取り出されることがあります。
JPCERT/CCの注意喚起では、次のような手口が報告されています。
- 公開されているスマートフォンアプリを解析して、APIの宛先や、キーを特定する
- 画面からは操作できない内部のAPIに、不正なリクエストを送る
- 他のシステムへの侵入で盗んだAPIキーを使う
APIには、呼び出せる回数の制限や、権限の確認が必要です(レートリミットとは、APIをループで呼ぶ時の3つの約束)。
③ 盗まれたIDとパスワード
システムの欠陥を突かず、盗んだログイン情報で、正面から入る手口もあります。特に危険なのが、管理用アカウントです。ある事案では、管理用アカウントのログイン情報が不正に取得されていたと報じられています。
正規のIDとパスワードでログインされると、通常のアクセスと、見分けにくいことがあります。そのため、パスワードだけに頼らない多要素認証や、使わなくなったアカウントの整理が重要になります(最小権限の原則とは)。
④ 委託先・共通サービス経由
企業は、問い合わせ窓口、システム運用、会員管理など、さまざまな業務を、外部の委託先やサービスに任せています。そこが狙われると、そのサービスを使う複数の企業に、同時に影響が出ます。
2026年10月には、複数の企業が利用する、問い合わせ対応のシステム(FAQシステム)への不正アクセスで、証券会社などの顧客情報が漏えいした可能性があると、公表されました。委託先の従業員のパソコンがマルウェアに感染したことが原因と報じられた事案もあります。
自社のシステムを、いくら守っていても、委託先から漏れることがある。これが、サプライチェーンの怖さです(ゼロトラストとはの「社内だから安全」を疑う考え方にも通じます)。