※この記事は、2026年10月16日時点の公表・報道にもとづいています。事実と推測を分けて書いています。続報で、内容が変わる可能性があります。
報じられたこと
2026年10月15日、NHKは、「相次ぐ不正アクセス “AIエージェント”使用の証拠見つかる」と報じました。記事の詳細は、閲覧の制限のため、見出しと要旨のみ確認しています。
これに先立つ10月11日、ITmedia@ITは、「魔の9月」と呼ばれる、一連の不正アクセスの背景を説明できる仮説の1つとして、AIエージェントによる攻撃の高速化を挙げていました。この記事では、確認できていることと、まだ分からないことを分けて整理します。
AIエージェントとは
AIエージェントは、人が細かく指示しなくても、目標を与えられると、手順を自分で考えて、実行していくAIです(AIエージェントとは)。正当な目的(業務の自動化など)に使われる一方で、攻撃に悪用されることも、懸念されています。
確認できている調査:Gambit Securityの報告
セキュリティ企業のGambit Securityは、ある攻撃者が使っていた中継サーバーを調べ、次のことが分かったと報告しています。
| 内容 | 報告されていること |
|---|---|
| 使われていたAI | 「Hermes」「Strix」「Cairn」という、3種類のオープンソースのAIツール |
| 攻撃の進め方 | 脆弱性の探索から、侵入、権限の拡大、機密情報の探索、データの持ち出しまで、攻撃の大部分を、AIが自律的に進めていた |
| 標的の選び方 | アクセスランキングのサービスから、ショッピングサイトを抽出し、大手のECプラットフォームを除いて、独自開発のシステムを持つ店舗を重点的に狙った |
| 調査の効率 | 301のサイトを、一括でAIに渡し、高リスクの脆弱性だけを、調べさせた |
| 費用 | 1社あたり、約25ドル(日本円で、約4,000円台)と報じられている |
| 目的の1つ | 決済画面に、不正なスクリプト(スキマー)を埋め込み、カード情報を盗む |
「スキマー」とは、決済画面に埋め込まれて、入力されたカード情報を、盗み取る不正なプログラムのことです。
まだ確認できていないこと
重要なのは、この調査と、国内で相次ぐ個別の流出事案が、直接結びついているかは、公表された情報では確認できていないことです。
| 確認されていること | 確認されていないこと |
|---|---|
| AIエージェントを使った攻撃が、実際に行われている(海外のセキュリティ企業の調査) | 国内の個別の流出事案が、そのAIによるものだったか |
| 攻撃のコストが、下がっているとされる | 流出の件数が増えた原因が、AIによるものか |
| 国内の不正アクセスで、AIエージェント使用の証拠が見つかったと報じられた(NHK) | 証拠の詳しい内容と、どの事案に関するものか |
JPCERT/CC(2026年10月8日)は、確認されている手口として、既知の脆弱性の探索、API経由の不正操作、特定ツールの脆弱性の悪用などを挙げ、「すべての事案で同一の攻撃手法が使われているとは限らない」と述べています(なぜ今、個人情報の流出が相次いでいるのか)。
「攻撃のコストが下がる」ことの意味
AIエージェントによる攻撃が、実際に広がっているとして、何が変わるのでしょうか。確認できる事実と、そこから考えられることを分けます。
確認できる事実
- 攻撃の多くの作業を、自動化できると報告されている
- 1社あたりの費用が、数千円程度と報じられている
そこから考えられること(推測)
- 標的ごとに、脆弱性を探す作業が、安く、速くなる。JPCERT/CCが確認した、標的ごとの探索の手口と、相性がよい
- 大手だけでなく、小さな組織や、小さなサービスも、攻撃の対象になりやすくなる
- 修正の遅れや、公開範囲の不備が、短時間で見つけられ、突かれる
これらは、私の見立てであり、事実として確認されたものではありません。